SSDに関する検証 その7
<緊急特集!!SSDに関する検証 その7>
ペンネーム: ミラニスタ
磁気ディスクの代わりに半導体メモリにデータを記録するストレージ装置
SSD (Solid State Disk) の検証を行っています。
検証製品(富士ゼロックス株式会社様製 GigaExpress)の紹介URL⇒
http://www.fujixerox.co.jp/product/gigaexpress/
▼ 前回のおさらい
限られた容量(検証機は 16GB)の SSD を有効活用する目的で、UNDO と
REDO の SSD 化に引き続き、一時表領域を SSD 化してディスクソートの高速
化を検証しました。
ディスクソートは、SSDで高速化が可能ですが、SORT_AREA_SIZE を一時的に
大きくできるのであればメモリソートの方がよい。という結果となりました。
▼ メーカに聞け!!
今までの検証テーマと異なり、SSD は皆さんが気軽にご自分の環境で試して
いただけるものではありません。
従って、SSD についてその良さを十分お伝えできていないのではないかとい
うもどかしさを執筆者として感じています。
そこで、今回は GigaExpress の製品開発に携わっていらっしゃる方へのイン
タビューを通じて、SSD の可能性や将来性を感じていただければと思います。
お答えいただくのは、
富士ゼロックス株式会社 光システム事業開発部 上村 健 様です。
日付:7月某日、場所:当社茅ヶ崎オフィス
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ミラニスタ(以下 ミ):上村様、本日はよろしくお願いいたします。
上村様(以下 上) :よろしくお願いいたします。
Q1. 製品開発の経緯
ミ:我々は、富士ゼロックス様が何故半導体ディスクなのか?という点がイ
メージしにくいのですが。。。製品が誕生するまでの経緯をお聞かせくだ
さい。
上:私達が持つ光伝送技術をビジネス展開する目的で、情報通信の分野で調査
を行っていたところ、サーバ-ストレージ間のパフォーマンスギャップが
深刻であることがわかりました。
また、ドキュメントカンパニーとして当社の目指す、ドキュメント情報と
基幹情報データをシームレスに連携するネットワークサービスにおいても
ストレージI/Oの高速化に対するニーズが大きいことが、当社独自の光バ
ス技術を応用した半導体ディスクの製品開発のきっかけとなりました。
ミ:なるほど。光バス技術というのは半導体メモリへのアクセスにおいてどの
ようなアドバンテージがあるのでしょうか?
上:基板上の沢山のメモリはバスによって接続されています。このバス型配線
で伝送速度を上げることが非常に難しいことに私達は着目し、以下URLの
光バス技術の開発を進めてきました。GigaExpressにもこの技術が使われ
ています。
http://www.fujixerox.co.jp/company/technical/osb/index.html
Q2. GigaExpress の特長
ミ:光バス技術の他に何か”ウリ”はありますか?
上:PCI Express という高速なシリアル・インターフェースでサーバ-ストレ
ージを直結している点です。これにより、高い伝送帯域と低い伝送遅延
(レイテンシ)を実現しています。つまり、比較的小さいブロック単位で
膨大なアクセスが集中する、例えばデータベースのようなアプリケーショ
ンで威力を発揮します。
また、GigaExpress 2ポート版は DAS(Direct Attached Storage)の高速
性を生かしつつ、2台のサーバからファイルを共有することが可能です。
ミ:それは、まさに Oracle RAC 向けのストレージですね。
Q3. DRAM を使っていることについて
ミ:GigaExpress は、最近ノートPCにも積極的に採用されるようになったフ
ラッシュメモリを使った SSD とは違い、揮発性の DRAM を採用されてい
ます。両者の違いは何でしょうか?
上:フラッシュメモリは、振動に強く故障が少ない、また何よりも不揮発性で
あるという点で、HDD に替わる記憶媒体として注目されています。
しかし、速度に関しては、特に書き込みが DRAM に比べて一桁遅くなり、
書き込み回数にも制限があるため、データベース向きではないと考えます。
Q4. 電源瞬断に対する対応
ミ:DRAM であれば電源が瞬断しただけで内容が失われてしまいますが、どの
ような点に留意して導入すべきでしょうか?
上:現状では UPS(無停電電源)から給電していただき、他の RAID ディスク
等にデータを退避していただくような構成をお願いしていますが、今後こ
のような機能を含めた製品検討は進めています。
Q5. 製品の信頼性(MTBF:平均故障間隔)について
ミ:磁気ディスクに比べ、可動部分が少ないことによる故障率の低さについて
教えてください。
上:私達の試算では、数十台構成の HDD の MTBF が 5万時間。半導体ディスク
自体は 20倍の 100万時間と見ています。装置の信頼性を支配するのは電源
ですが、GigaExpress 2ポート版では電源が冗長化されており、ラックマウ
ント状態でのホットスワップが可能となっております。
Q6. 大容量化について
ミ:検証では、限られた容量の中で、いかに効率的にパフォーマンスを向上さ
せられるかということを追求してきましたが、大容量化へのお考えをお聞
かせください。
上:大容量化はニーズが高く検討を進めています。100GBの製品をいかに低コス
トでご提供できるかがポイントと考えています。
フラッシュメモリが低価格化により、ノートPC用等に普及してきたのと同
じように、DRAM においても価格破壊が起これば、DRAM SSD も一気に普及
するのではないかと期待しています。
Q7. 対応 OS のロードマップについて教えてください。
ミ:PCI Express を搭載しているサーバ機種の関係で、Windows、Linux から
対応を始めましたが、現在 Solaris版の開発を進めています。
Q8. 機器貸し出しについて
ミ:アンケート(クイズ)では、ほとんどの読者の方が「是非、速さを体験し
たい。」という声をお寄せいただいていますが、検証用として機器を貸し
出して頂くことは可能でしょうか?
上:はい。無償で対応しております。
ストレージ I/O でお困りの方、遠慮なくご連絡ください。
ミ:本日はありがとうございました。
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いかがでしたでしょうか。Oracle技術者にとってあまりなじみのない言葉が
出てきたのではないでしょうか?
いくつかのキーワードを補足説明します。
1) 伝送遅延(レイテンシ:Latency)
伝送遅延というとネットワーク用語を連想してしまいますが、レイテンシ
の方がストレージにはふさわしいような気がします。
データのリクエストを行ってから、実際にデータが転送されるまでの(遅
延)時間を指します。
磁気ディスクと比べ、SSD はシークタイムがない分レイテンシが低いと言
えます。
さらに、SSD は機構上、ランダムアクセス、シーケンシャルアクセスにお
ける明確な性能の差がないということも、データベース用ストレージとし
て優れているのではないかと考えます。
2) フラッシュメモリ
書き換えが可能で不揮発性(電源を切っても内容が失われない)半導体メ
モリ。高集積性に優れ大容量化に向いている NAND 型フラッシュメモリは、
近年の低価格化に伴い、小型のハードディスクと競合するまでになってい
ます。ただし、メモリセル(1bitを記録する単位)あたりの書き換え回数
に限界(酸化膜が通過する電子によって劣化することが原因のようです)
があるために、本格的なデータベース用途には向いていないと思われます。
3) DRAM:Dynamic Random Access Memory
書き換え可能な半導体メモリの一種ですが、コンデンサとトランジスタの
組み合わせにより電荷を保持することで情報を記憶させるため、定期的に
記憶保持をするための再書き込み(リフレッシュ)動作が必要です。
コンピュータのメインメモリはほとんどが DRAM です。
▼ おわりに
この連載が始まったとき「SSD」というキーワードを検索エンジンで調べら
れた方は少なくないのではと思います。
私も検証のお話を頂いた際にいろいろ調べてみましたが、特にフラッシュメ
モリを搭載した SSD は、モバイル端末用記憶デバイスとして、近年非常に注
目を集めていることを改めて実感しました。
GigaExpress は、そういった一般的な SSD とはかなり異なったユニークな
製品であることがお解かりになられたかと思います。
私は、機会がある毎に GigaExpress をパフォーマンス改善の切り札として
お勧めしたいと思っているのですが、やはり DRAM ベースということで、万一
の場合の電源断でデータが失われてしまうことに、大きな懸念があるというご
意見を沢山耳にしてきました。
恐らく、このシリーズの最後になると思いますが、SSD をミラーリングする
ことによって、その辺の懸念を払拭できるかどうか検証したいと思っています。
今回は、ここまでです。
次回から、SELECT における SSD について検証します。
中学時代の友人が参議院選挙で当選してました!!
今週梅雨明けか!?の茅ヶ崎にて